オバケの駐在所

俺は適当に
了解の返事をして
携帯を切った。

そして窓に写った自分を見て
右手で髪をさっと整え、
顎を引き顔の角度も変えて、
窓に反射した男を見据える。

――俺の望みは1つだけだ。

いい意味でも悪い意味でも、
何かが変わる予兆というのは、
こうした何気ない
日常の敷居に凹凸をつけて
滑らすようなもの。

噂が本当だとしたら。

俺が天罰にあうなんて、
さらさら思えないが、
それで願いが叶うってんなら
それでいいのかも。

窓の上部からシェードが
ゆっくり下りはじめた。

……ってバカか俺は。

信じられないような
出来事にでさえ、
無様にそれにすがる
自分を思うと
どうにもイラつく。

俺は振り向き、
会社を出ようと
硬い廊下を
鳴らしながら歩いた。

数歩歩いたところで、
エレベーターの前の
開け放していた
ウッドの扉の先から、
大きな笑い声が聞こえてきた。

「彼も頑固なところが
あるからなぁ。
考えを変えることができない
固い頭なんだよ」

部長の声だった。

タイルカーペットが
敷いてある
空調の利いた喫煙部屋で、
取り巻きに何かを話す
やたらと低い声が、
壁を通り越して
廊下にまで洩れてくる。

……俺のことかな?