オバケの駐在所

……はあ、まったく。

ただでさえ空気の流れが
よくない廊下だというのに、
わざわざ居心地の悪い空気を
作るなよ。

――ピリリリリ。

すると左の胸ポケットから
着信のコール音。

しまった……。
また電源をOFFにするのを
忘れてた……。

無視するわけにもいかず、
しぶしぶポケットから
携帯を引き出す。

しかし電話の着信音とは
何故こうも
不快な気持ちに
させてくれるのだろうか。

「あれ?」

携帯のディスプレイには
予想と違う小百合の名前。

昨日の嫌な案件が
頭をよぎったが、
仕事用の携帯を
使ってるってことは
あいつも会社に来てるんだな。

俺はあえて気の抜けた声で
電話に応対してやると、
それ以上に
締まりのない声が
受話器から返ってきた。

「ヤッホー。
ねぇ、ひさびさに
ちょっと呑まない?
いつものとこで
待ってるからさ」

いつものとことは
会社から河川を挟んだ
魚河岸跡。

と言っても
海の幸と符丁が店内を賑わす
敷居の高そうな店じゃなくて、
俺たちがよく行っていたのは
ただのこなれたバーだ。