オバケの駐在所

机の上の灰皿に
挿してあるタバコから
ゆらゆらと上る煙の間を
音もなく泳いでいる様は、
とても作り物に見えなかった。

本当に本物なのだろうか?

好物はやはり
アイスクリームとかか?

……ていうか
その前にオバケに
(あくまでらしきものだけど)
犯罪も送検も
あるもんなのか?

そんな常識外れな事を
考えながら
書類を書き終えると、
屈託顔で眉を
ひそめている小百合に
袖を引っ張られた。

ひとまずこの場を
離れようということだろう。

「じゃあ受理して
おくからね」

こんな気味悪いところ、
俺もさっさと
おいとましたかったが、
思うふしが俺にはあった。

「……あの」

情けないことに
喉が少ししぼんでいた。

「……んんん。
あの……、
もしオバケが……
いるんだとする。
仮定の話だけど。
オバケっつーのは
人の言うこととかも
本気で聞いてくれたり
するんだろうか?
……その、
たとえば願い事とかさ」

こんなことを真剣に聞いたら
警官の思うツボだろうけど、
夢みたいな話でも
この際なんでもいいと思った。

人の噂ってのは煙みたいに
火がないところに
立たないもんであるし、
ああ、でも
こんなことを聞いてる自分が
アホらしくもなるが……。

「んーどうだろうな」

知らず知らずに
白い素焼き風の
湯呑みに注がれていた
お茶をすすりながら、
こんな変な質問にも
慣れっこといった具合に
警官は言う。