オバケの駐在所

「……お巡りさん。
私たちは知人の
お墓参りに来ただけです。
やましいことはありませんけど
お巡りさんが
聞きたいことがあるのでしたら
お話しますよ」

見かねたのか
小百合が丁寧な口調で
言葉を添えた。

「うん。話がわかる方で
助かります。
お時間はあまり
とらせませんので、
どうぞ駐在所の中で」

警官が背中を向けると、
小百合に肘で
わき腹を突かれた。




中は交番として
機能してるのかってくらい
素朴で、どこか田舎を
思い出させるような
質素な感じだった。

天井付近に
もやができるくらい
タバコの煙が漂っていたり、
お菓子の紙の山が
食べかけも含めて
机の上にてんこ盛りに
置いてあったりと、
だらしなさも垣間見る。

それとどこからか
聞こえてくる
ヒソヒソとした話し声。

やはりお客がいるらしい。
奥の部屋にでも
移ったのかな?

そんなことをよそに
面接官とでも
対峙してるかのように、
小百合は姿勢を正して
警官と話しだした。

俺は窓から外を見る。

もうだいぶ夜風も
冷たいと感じなくなり、
毎年訪れる季節の去来を
しみじみ味わうことができた。

……また春がきたんだな。