女子社員の世間話のような
陰口のようなものは、
今日も古参の石張りの廊下に
よく反響している。

その話を
知ってるからには
事務員の女の子たちだろう。

2人は缶ジュースを買うと
人を嘲り笑いながら
向こうへ歩いていった。

……天罰ね。

彼女たちには
そこまで言われる
筋合いなんてない。

足音が廊下の向こうへ
消えるのを待ってから、
俺は通路に出た。

自動販売機にお金を入れて
ボタンを押すと、
今度は鉄のかごを揺らす
無機的な音だけが
廊下に静かに響いた。

「ちっ」と舌を鳴らして
重たい気分が
紛れるわけでもないが、
温かい缶コーヒーを手に取って
もう1度窓際に立つ。

ここからの景観も
もう見慣れたものであった。

眼下には首都高速が広がり、
所狭しと並ぶ車が
日本橋の上あたりから
毎度のごとく
長蛇を作っている。

ライトがわずかに灯る
仕事終わりの薄暗い時刻。