「ねえ、知ってる?
神様が住んでる排水溝の話」

「神様?」

「そう。なんかね、
その排水溝に
お金を落とすと、
そのお金が何倍にもなって
返ってくるんだって。
それでお金持ちになって
会社も辞めて
遊んで暮らしてる人も
いるらしいよ」

「何それ。嘘くさぁ〜。
都市伝説よりも
信憑性がないよ」

「本当なんだって。
それにね、
落とすのは
お金じゃなくても
何でも大丈夫らしくて、
『愛』とかでも
いいんだって。
心から叫べば
願いが叶うらしいよ」

「やめてよ、もう。
何の神様なのそれ?
だいたいなんで
神様がそんなところにいるの。
明らかにインチキ臭いよ」

「えー、いいじゃん。
よくない?
……その排水溝にはね、
人間界に迷い込んで
うっかりその身を
落としてしまった
どこぞの神様が
閉じ込められていて、
鉄格子の蓋の隙間から
自分に気づいてくれる誰かを
ずっと待っているの。
願いを叶えるかわりに
助けてもらうためにね。
そうしてね、
陽も差し込まない
暗い穴の底から
藁にもすがるような
心細い声でこう
聞こえてくるんだってさ」

『うけたまわる……
うけたまわる……』