オバケの駐在所

「ねぇ、私ちょっと
出かけてくるね。
すぐ帰ってくるけどさ」

一応知らせておこうと
お風呂場のドアを
ノックしてみるが、
なかなか反応がない。

まさか中で……と思ったが、
しばらくすると
扉が少し開いて
私のみゆきお姉ちゃんが
恥ずかしそうに
ひょこっと顔を出した。

濡れた髪をかき上げて
オールバックにしてる姉は
曇りガラス越しでも
そのスタイルの良さが
わかるが、
姉妹といえ簡単に
裸を見せるわけじゃない。
もちろん首から下を
見せてくれない理由は
他にもあるかもしれないが。

「ご飯一緒に食べたいから
早く帰ってきてね。
……それとなつみ、
調味料はちゃんと器に
移し替えときなさい。
おかげで料理がてこずって
焦がしちゃった」

と、姉は捨て台詞を吐きながら
扉を閉めて
カコーンと洗面器を鳴らす。

……姉め。
不器用を私のせいにしおった。

すると
玄関のチャイムが鳴る。

あまり家を
訪ねてくる人はいないから
誰だろうと思い
首を傾げながら
玄関の覗き穴を見ると、
ただの宅配業者であった。

死人が追いかけてきた
わけじゃあない。
もちろんのことだ。

荷物は田舎の両親から
送られてきたもので
黒棒、タケノコ。

そうだ、
お姉ちゃんのこと
両親にも早く知らせなきゃ。
きっと驚くぞ。

……だけど問題は
葬祭も済ましてるし、
死亡手続きも踏んでること。

社会的に
抹殺されてるからな……。

そこらへんは……
いや、まぁなんとかなるか。
そんなもんおいおいで。