オバケの駐在所

よく見ると
その白い大きな壁は
蛇みたいになまめかしく
右や左に弧を描き、
貫禄のあるゾウガメの
甲羅みたいなものを
びっしりと
何kmにわたって
張りつけていた。

まるで夢でも
見ているようだった。

それは生き物のようで
どっかの書物に載っている
その姿のまんまだ。

果てしなく
長い体をもったそれは、
少しずつ角度を変えていき
私たちを空中で
すくい上げてくれて
徐々に落下のスピードを
緩めてくれた。

私の髪の毛はカチカチに凍って
耳の奥まで
冷たくなっているのに、
すごく暖かいぬくもりに
触れた気がする。

見上げるとそれは
ずっと上空まで
うっすらと朝焼けに
照らされていた。

銀色のタテガミを揺らした
とてつもなく大きな
白き龍。まさに龍であった。

その姿はいつまでも
眺めていたいくらい
神々しい姿であったが、
意志に反して
私はどんどん気が
薄れていってしまう。

……ああ、
お礼くらい言いたい。
あなたは私のことを
知っているの?

最後に網膜に
焼きついているのは、
きっと幾年の悠久の歴史を
生きてきたのだろう、
樹木のような
ゆゆしげな龍の肌と
月の模様と似た
龍のいかめしい瞳であった。