オバケの駐在所

なんでなんだろう。

大人になったとか、
誰かに影響をうけたとか。

誰か……誰かか。

……なんにせよ見て見ぬふりを
するわけにはいかない。
行きずりの間柄と言えど
こんな私にも
良くしてくれたもん。

それに『死』なら
私はとっくに味わってるさ。

「ダイコク様!」

「ん?おや、姫じゃないか。
どうしたのかな?
そんなに血相を変えて」

神を前にしていざとなったら
声が震えそうだった。

……でもしっかり言わなきゃ。

「そ、その子を
返してもらえませんか?」

「うむ?どうしてかな?
わしはお金を払って
コレを買ったんだ。
不当な取引を
したわけでもない。
何か理由があるのかね?」

「その子は……その」

……頭が真っ白になって
言い訳が出てこない。

「言っておくけど
わしは嘘が嫌いだからね。
それを踏まえておきなさい。
何故に姫がこんな魚を
気にかけるのかな?
こいつにそんな
器量があるとも思えんし。
それとも神のくせに
同情してるんじゃ
あるまいな?」

私の考えてることは
全て読まれてるようだった。

だいいち私は
ダイコクを非難できる
立場じゃない。

普段の食卓に
出ているものだって
私が知らないだけで、
兄弟、家族から
引き離されたものも
いたかもしれないし、
そのうえ自らが培ってきた
生涯の命のエネルギーを
私の人生に
捧げてもらってきた。

つまり虫がいい話なんだ。