オバケの駐在所

今イワシさんに
何を言おうとした?

自分がさっき食べたものは
なんだったのか。

自分を棚に上げて
イワシさんに感情のまま
ありえない言葉を
ぶつけようとしたりして。

何を考えてるんだ私は。

危うくバカな事を
口走りそうになった……。

イワシさんはマチ針で
止められてるように
頭を下げたまま動かなかった。

気づいたけど
金の小判が手元でカチカチと
震えている。

「イワシさん……?」

「……あ、いや。
すまんのう、
変な所を見せてしまったけえ。
なつみさんは皿洗いを
続けてくだせぇ」

イワシさんは思い出したように
土下座を解くと、
おもむろにそこらを
歩きだした。

様子がおかしかった。

色々な物にぶつかり、
落としながら、
それでいて足取りも挙動不審。

見かねたみんなが
声を掛けるが
心ここにあらずだ。

懸念そうに
その姿を追っていた私を
察してくれたのだろう。
その訳をさっきの
ねじりハチマキの半魚人が
こっそりと
耳打ちをしてくれた。

――妹?

先ほどの幼顔の女中は
イワシさんの妹だと言う。

向こうでは包丁を掴んだ
イワシさんを
みんなが慌てて制止していた。