オバケの駐在所

「逃げることはできないの?」

「ほれ、見ぃんさい。
手すりんとこに
ヒイラギが植えてあんべえ?
あっしらはこの葉っぱが
嫌いなんじゃ。
トゲトゲしいくて
とても恐ろしい」

確かに甲板から船尾まで
歩いてきたが、
どうやらぐるっと舟の一周、
等間隔ごとに常緑が
植えてあるようだった。

だけど柊の葉っぱ。
それも鉢植えに
入りそうなくらいの幹だ。

こんな小さな葉っぱが
刺さったって
唾つければ治るんじゃ
ないかとも思うけど。

まぁ、実際の
鰯程度の体からしたら
恐ろしく見えるのも
しょうがないか。

「イワシくん、
宴会が終わるしばらくの間
なつみを神に見つからないよう
面倒みてやってくんないかな。
俺は少し神の相手を
してこなきゃ。
あんまり放っておいてたら
伏魔殿のやつらに
怪しまれちまう」

「ああ、行ってきんさい。
あっしももとより
そのつもりじゃったけえの」

そして私を置いて
再び酒の席に戻ろうとするが、
そんなハジメさんの腕を
私はあわてて引っ張った。

「ん?」

あれ?でもなんで私
引っ張ったんだろ。
呼び止めるだけで
よかったのに。

彼の顔に顔を寄せて
何を思うわけでもないが……。