いつか駅で偶然その男と
すれ違った時は
思わず目を剥いた。
ずっと会いたかった
やつだった。
携帯で笑いながら
誰かと電話をしていた。
過去に何事も
なかったかのように
ふてぶてしく。
男は幸せそうだった。
人の人生を壊しておきながら
自分だけのうのうと
暮らしているのが
俺は信じられなかった。
猫や狸でもひいたくらいにしか
思っていないのか、
自責の念などその男からは
微塵も感じられなかった。
義母はまともに歩くことさえ
ままならぬ体になり、
妻にいたっては点滴や
チューブをつないだまま
いまだに昏睡状態だと
いうのに。
俺は男の背中を追いながら
右手に持っている包丁を
強く握りしめる。
もう何度こうして機会を
うかがっていることか……。
するとその時、前を歩く男は
電話をきった。
今日はまわりに
人も歩いていない。
おあつらえむきに
雪も静寂を作ってくれる。
……犯罪者の罪の重圧なんて
しょせん俺のものさしじゃ
計り知れないものだ。
ならば俺も味わうよ。
貴様にあの世で
懺悔させてやる。
すれ違った時は
思わず目を剥いた。
ずっと会いたかった
やつだった。
携帯で笑いながら
誰かと電話をしていた。
過去に何事も
なかったかのように
ふてぶてしく。
男は幸せそうだった。
人の人生を壊しておきながら
自分だけのうのうと
暮らしているのが
俺は信じられなかった。
猫や狸でもひいたくらいにしか
思っていないのか、
自責の念などその男からは
微塵も感じられなかった。
義母はまともに歩くことさえ
ままならぬ体になり、
妻にいたっては点滴や
チューブをつないだまま
いまだに昏睡状態だと
いうのに。
俺は男の背中を追いながら
右手に持っている包丁を
強く握りしめる。
もう何度こうして機会を
うかがっていることか……。
するとその時、前を歩く男は
電話をきった。
今日はまわりに
人も歩いていない。
おあつらえむきに
雪も静寂を作ってくれる。
……犯罪者の罪の重圧なんて
しょせん俺のものさしじゃ
計り知れないものだ。
ならば俺も味わうよ。
貴様にあの世で
懺悔させてやる。

