翌朝、鏡を見てみると
そこには寝ぐせがひどい
いつも通りの自分が
うつっていた。
気になる瞳もいつもどおり。
視界もとおっている。
……夕べはすごい出血だった。
もしかしたら眼球でも
抜かれたんじゃないかと
思ったくらい。
警察や病院にはなるべく
行きたくなかったから
よかった。
問題ない。
……何も問題ない。
「カズくーん、
早く朝ごはん
食べちゃってー。
片づけられないからさー」
「……ああ、今いく」
洗面所まで届く元気な声。
俺はその声が呼ぶ
台所へ大股で歩いて向かう。
「もう、洗面所の電気くらい
消してきてよ。
つけっぱなし!
電気代だって
馬鹿にならないんだから」
朝からけんけんと
うるさく喋れる彼女は
結婚してから3年ほどの
俺の妻だ。
名前はれいか。
倦怠期は3の数字が
つく時期ごとに
おとずれるというが、
俺は3年経っても30経っても
彼女のことを
想いつづけられる自信が
あるくらい
れいかの事が好きであった。
妻は話し好きで、
昨日家へ帰宅した時も
とても目の心配をする余裕が
ないくらい
いつもどおりの
マシンガントークで
俺を迎えてくれた。
「まったくうるさいな
れいかは。
今消してくるよ。」
そして何も変わらない……
いつもどおりの朝だ。

