「キィーヒッヒッ!
プルプルだぁ!うまそうだぁ!
お前には変わりに
これをやるよ!
河童の目玉さぁ!
固くて食えないしねぇ!
キィーヒッヒッヒッヒィ!」

わけもわからないうちに
そのばあさんは俺の左目に
何かを詰めこんできた。

それは目のくぼみいっぱいに
押しこまれている。

……なんだ?
何をされたんだ!?

黒い服を着たばあさんは
大声で笑いながら
人と人の間をすり抜けて
走り去っていった。

俺は動転していたが、
何かがおかしいということは
気づいていた。

あんな目立っているのに
誰もばあさんを
振り向かない。
見向きもしない。

なんだ?まさか俺にしか
見えていないのか?
俺は何をされた?
……左目が痛い。熱い。

頬を手で触ると、
なんとなく予感していたが
流れていたのは
やはり血であった。

「あんた!大丈夫かい!?
目からいっぱい血が
出ているよ!」

知らない人が驚いた顔をして
話しかけてくる。

「……大丈夫です。
どうぞ構わないでください。」

そう言って俺はそのまま
改札をくぐった。

……とにかく一度帰らなきゃ。
病院はそれからだ。
……くそっ。

けっして穏やかではない
面相で駅の階段をおりる。
壁にはよろけた時についた
赤い手跡が
こすれて染みこんだ。