オバケの駐在所

バランスはすでに後方へと
傾きつつあった。

応援しにきてくれたみんなは
さぞ歯がゆい思いをしてるに
違いない。

ライム……
他人を蹴落としてまでも
自分の思うとおりの
生きる道を選ぶ傲慢な性格、
やっぱり昔の俺にそっくりだ。

危なっかしくて
何かを失うことを
恐れていない。

俺はライムの肩を、上から
思いっきり張り手をした。

少しだけぐらつき
屈折ぎみになったが、
それでも力を緩めてこない。

怪物の拳を止めるほどの
俺の張り手でも
持ちこたえて踏ん張れるところ
やはり一筋縄ではいかないな。

俺はガクッと頭を落とし
うなだれる形になった。
だがそれは
諦めたわけじゃない。

……たしか
こんな感じだったか。

頭から生えた大きな角を
重心の低くなったライムの
背中越しに伸ばして
後ろのマワシを掴む。
短い腕の数倍はある
角ならではの芸当だ。

……この世の中、
1人で何もかも
上手くいく事なんて、
まずそうそうない。

何事にも斜に構えて
ストレスを抱えて
暮らすならば、
認めるべきって事だろう?

他人の存在を、
忌み嫌う自分の存在を。

なぁ、ライム。
もしプライドが邪魔すると
言うのなら、
その思いを打ち消すくらいの
マジな気持ちで
俺は応えてやるぞ。