オバケの駐在所

立ち会いから俺らは
互いの先手をとるため
がっぷり組みはせず、
張り手や突っ張り、
角と角の応酬で凌ぎをけずる。

ハジメがどこからか連れてきた
怪物達との稽古の成果を
見せつけたいところだが、
ライムもかなり力を上げていた。

状況は五分か?……いや、
劣勢かもしれないほど
受けるのがしんどい。
ぐいぐい攻め寄られている。

角と角が激しく絡み合うなか
ライムが不敵な笑みを
浮かべたのを
俺は見逃さなかった。

そしてライムに首を振られ、
その勢いで俺は
やばいことに土俵際に
追いやられてしまう。

なんでやばいかって
土俵際とはいわば
一枚岩の端ってこと。

相撲をするにはうってつけの
平たく大きい一枚岩は、
他の山からは少し
切り立った所にあるため
360℃のパノラマを
見渡せるようになっている。

まぁ、言いたいことはつまり
一枚岩の下は
崖になっているってわけ。

ま、まずい……

と、よろめいてしまった時、
それを機というばかりに
ライムが素早く距離を詰めて
一気に体を寄せてくる。

そしてマワシをとり、力づくで
押し切ろうとしてきた。

俺はもう土俵際で
後ろにつんのめる形で
棒立ちだ。

「油断したな。
ここから突き落として、
お前のプライドも
その白い毛並みと一緒に
黒星で汚してやるよ。」

一枚岩の端で
輪を作って見ていた
オバケ達なんかは
避けて勝負に魅入っている。