オバケの駐在所

「よっ!待ってましたー!」

と、笑顔で言う女の子。

「……ハジメは?」

俺が戸惑いながらも
岩の土俵上から聞くと、

「知らない。
どっか消えちゃった」

と、そんなことは
別段問題なしと言った具合に、
肝がすわった表情を見せて
ピースを立てる。

茶髪の友達もまた
眩しいほど余裕の笑顔だ。

……人里離れたこの地で
俺ら2人の取り組みを
オバケが余興にするのは
わかるが、
人が一緒になって楽しむな!

「見合うて見合うて、
さぁ待ったなしじゃ。
よいなライム?ミント?
急な意気込みを見せてみよ!
さぁ!」

しかしハジメは
どこに行ったんだ?
だいたい女の子達を
置いてけぼりにするなんて
あいつらしくもない……。

そう思いながらも
ゆっくりと呼吸を
ライムと共に高めていく。
ゆっくり……それでいて
荒々しく。

そして気が
沸点を飛び抜けたその時、
拳で地面を蹴った!

「はっけよい!」

と同時にいっせいの大歓声が
掛け声をかき消し、
俺とライムは体いっぱいに
ぶつかった。

肉から骨の髄まできしみ
痛みを感じるヒマもない。

一瞬も力を抜けないほどの
技と気のせめぎ合いだ。

「おいミント、
稽古をさぼってたって
聞いてたが
しっかり体が
できてるじゃねぇかぁ!」

「ふん、ここらで白か黒か
ハッキリさせようぜライム!」