オバケの駐在所

取り組みはもちろん
１日で終わらせるので
全員が全員と
組むわけではなく、
上位陣は場を盛り上げるために
力の具合が同等な相手と
たった一度の大一番として
その時までジッと
構えて待つことになる。

「今回で
年の見納めじゃからな。
白ミントと黒ライムは
結びの一番じゃ。……ひっく。
よいな？……うぷ」

と、天狗。
完全に酔っぱらいである。

結びの一番は
最後の取り組みの事。
ただ見納めなんて
天狗は言うが、
いつも気まぐれに
こういった催しを開くので
納めもへったくれもない。

むしろこれが
今年の初場所だ。

「最後じゃ
寝て待つしかねぇな。
よし、キャルロット。
出番がきたら起こしてくれ」

「あーもう、
どーしよーもないんだから。
みんな出番がくるまで
コツコツと稽古に
励むってゆーのに……。
ウサギとカメを知らないの？
きっと今回は
みたけ山の惨敗ね。
ますます子ども達が
みじめな思いをする事に
なるわ。」

するとその体の不自由な
子ども達が、キャルロットに
べったりくっつきながら
脇から顔を出してきた。

「キャロ姉、
ミントはあれでいんだよ。
だいたい稽古してる所なんて
見た事ないしさ。
性に合わないんだろ？」

「そうそう、
ウサギのフンと一緒。
チマチマとやる事は
長続きしないのさ。
キャッハッハッハ！」

その甲高い声は耳に障る。

嫌な笑い声を受け流すために
顔を背けたら、
夜の寒空には冷たく火照る月。