「……そうですか。
本当なら私がおじさんと
くんずほぐれつ
したかったんですけど
それならしょーがないですね。
じゃあコレを見て
どうぞ励んでください。
腰をやっちゃわないように
気をつけてくださいね。」

そう言ってキラキラの
『でーぶいでー』といった
小さな円盤を取り出して
もじもじ恥ずかしそうに
はにかむ女の子。

「ああ、腰ばかりは
気をつけないとな。」

ハジメのほうはぶっきらぼうに
眉間にしわを寄せて
タバコに火をつけると、
煙を空中にくゆらせる。

こいつらまさか……?

「……って!
言い方が気持ち悪いわ!
相撲の乱取り稽古な。
君じゃ体も小さいし
女の子だから危険だし。
しかし君んちが相撲好きで
助かったよ。
DVDありがとう。」

「ええ。
その中には歴代の横綱の
名勝負が入ってるんですから
DVDのデータ、
くんずほぐれつしちゃ
駄目ですからね?」

と、小指を噛みながら
視線をそらす女の子。

……まあ、今の所は
スルーでいいだろう。

何はともあれそんな会話を
小動物らしく
女の子の腕に無防備に
ぶら下がりながら
聞いていたら、
先ほどの大男がこっちへ
目の前まで近づいてきて、
威圧をかけるように
少し荒だった感じで
話しかけてきた。

「おい、早く始めないか?
こっちは好き勝手に
ぶっ飛ばしてもいい奴が
いるって聞いて来たんだ。
わしのストレスのはけ口になる
かわいそうな奴はお前か?
ハジメ」

と、この俺の前で
上からえらそうに
見下ろしてきたこいつ。
顔なんかは上手く
人間のふりをしてるが、
殺気なんかは
隠しきれないようだ。