駐在所の中に入ると
ハジメは壊れたストーブに
火をつけようと
マッチをこする。

どうやら点火する装置が
壊れているようで、
それで火をつけるらしい。

だが何度マッチをこすって
着火口に近づけても
風に吹かれたように
不思議に火は消えてしまう。

「ケケケ」

「……コラ、
もーお菓子あげないぞ」

ハジメがそう呟くと、
4本目のマッチでようやっと
ストーブは大きく火をつけた。

「さて、とりあえず
ウスとキネは用意できたけど
大切に使ってくれよな?
俺のじゃないんだから……」

「わかってる。
おっ、立派だね。
いい餅がつけそうだ。」

「でもお前には
ちょっと大きいか?
これじゃ餅はつけても
ひっくり返せないな。」

たしかにそれら一式は
キネはともかく
ウスは俺の体の倍ほどあって、
綺麗な山吹色をしているけど
ウサギには扱えそうにない。

だが別に俺はこれでよかった。