見ず知らずのマタギの
オバケのご親切な言葉。
嘘か本当かは定かじゃないが
とりあえず私は
無反応を決めこんだ。
こんなまわりが人で
密集してる所で呟くのは
独り言みたいで
さすがにちょっと嫌だ。

「さもなければ窓を
全開にしておく事だ。
命が惜しければね。」

そう言ってマタギは
徐々に輪郭を消していき
風に流されるように
いなくなってしまった。

残された私としては、
さてどうしたものかと
とりあえず腕を組んで
先ゆく不安に対し
悠長にかまえてみる。

……オバケの話を
鵜呑みにして
何も起きなかったら
先生に怒られるだけだしな。
…校長のタヌキは
こわいし。

「あれ、奇遇だな
こんな所で。」

なんて真面目に考えていたら
今度は後ろから
聞き慣れた声。

私は駅と反対側の
開閉扉の前で
外を眺めていたのだけれど、
その反射した
窓ガラスを利用して
誰かが話しかけてきた。
肩ごしに振り返ると
それはハジメさん。
ハジメさんは
近所の交番にいる
ちょっと変わった
おまわりさんだ。