「美姫ちゃん、
悪い鬼は捕まえたから。」

私はその言葉に
ニコッと笑ってみせる。

「バッグ……預かろうか?
それを持ってるから
不安なんだろう?」

それはやっぱり
ちょっと考えちゃう。
だって大切な
ママの遺品だし……
どうしよう。

「渡せばいいんじゃん。
人形だけ取ってさ。」

横から割り込むようにして
そう言い切る単細胞な夏彦。

「なによ。
あんたには
わからないでしょうけどね、
これは……」

「うん、僕も
黒い髪の毛を見た時は
日本人形かなんかと
勘違いしてたけどさ。
でもね、
君が交番で寝てる時
男の人と女の人が
訪れたんだよ。

君のお父さんとお母さんは
…その、オバケに
なっちゃったかも
しんないけど、
もしかしたら魂のほうは
死んでからきっと
浄化されてさ。
あの世に行く前に
君ん所に寄ってったんじゃ
ないかな?

バッグの中身
見てごらんよ。」

私は目を丸くしながら
夏彦に言われたままに
ゆっくり手に持っていた
バッグを覗いてみた。

そして気づかれないように
夏彦に背中を向ける。
中を見たら
我慢していた
感情があふれて
情けない事に
ちょっとだけ
泣いてしまったからだ。
……年下の前なのに。