オバケの駐在所

「えっ、でもそれは……」

あんな事件の後。
本来なら渡すべき人に
渡したほうが
いいんだと思う。
そーすれば私の身も
安全なのかもしれない。

でもこれは……
これはそんな簡単に
渡せるものじゃ……。

おじさんにとられないように
バッグを握った手に
力をいれる。

そして心の葛藤の末に
断ろうとした私が
「おじさん、
やっぱりこれ……」と
おまわりさんの顔を
見上げた時、
びっくりする事に
さっきの土くれが
いつの間にか
おじさんの背後にいて
勢いよく殴りかかってきた。

「きゃっ!」

「いっって、
なんだこいつは……土?」

近くで見ると
やはりそれは
そこらへんから
寄り合わせたような
土の塊で
大の大人より一回りも
大きい。

目も口も何もない
そいつだが
またしても正確に
おまわりさんを狙って
腕を振り下ろす。

「わわ、
こいつ意思があるのか?」