オバケの駐在所

1つの人影は
首に巻きついていた
男の尻尾を噛み切って
そのまま男に襲いかかる。

もう1つの人影は
助けようと
庇おうとしたのか
私に飛びかかってきた。

「ぎゃあ!
俺の尻尾がぁ……!」

と男はもがき
悲痛の叫び声を
上げていたが
私の口から出た言葉も
思わず「ぎゃあ!」で
あった。

飛びついてきた
その姿を見てみると
赤い縁取りメガネに
制服をきた
まさしく
志野ちゃんであった。
虚ろな瞳で
こちらを覗いている。

向こうを見ると
男に馬乗りになって
殴りかかってるのも
さっきそこで
倒れていた晃君であった。

……なんで?
脈は止まってたのに。

「はっ、
お前は晃……。
そうか、いつの間に
はめられていたのか。
術者はお前かアカツキ!」

するとまるで洋服を
脱ぎ捨てるかのように
人間の男の姿から
いきなり脱皮して
本性を現した化け物。
その化け物は
金色の毛並みをなびかせ
大型の狐のような
イタチのような風貌になり
まさに妖狐と
言ったところか。

奴が黒い煙みたいな邪気を
漂わせながら
獣の姿をあらわすと
その残った2本の
長い尾を雄叫びとともに
巧みに操り
たちまち晃君と
志野ちゃんの体を
貫いてしまった。

したたり落ちる血。
あまりの惨劇に
見開いた目を
手で塞ぎかける私。