オバケの駐在所

すると男の体は煙のように
薄くちぎれると
なんとなく予想は
していたが
平手は空を切ってしまう。
宙に漂うその煙は
私の体をすり抜け
後ろにまわると
たちまち元の
男の姿に戻るのだが
先程と1つだけ違うのは
背中を向けたそのお尻から
3つに裂けた
長い金色の尻尾が
生えていた事。

「くふふ、志野といい
お前といい
何故そんな顔を強ばらせて
睨むんだ?
怖いじゃないか。」

そんな含んだ
笑い方をしながら
すかさず
1本目の尾で私の首を絞め、
そして2本目の尾で
自分の片一方の
腐っている目玉を
絡め取ると
それを私の口の近くまで
持ってきて冷淡に言う。

「これを食べさせたら
おとなしくなるかな。
それとも毒気を
あててやろうか?
どちらにしても
お前は
出しゃばりすぎたな。

……そうだ、
今度はお前の中に住むか。

まずはコウベを割って
中身をすすって
やるとしよう。」

と言いながら
3本目の長い尻尾の先を
槍のように鋭くさせ
怯える私の頭上に
有無も言わさず
構えたその時だった。

人影が2つその場を
遮ったのだ。