オバケの駐在所

……中学の時は
全国に行ったとか
言ってたっけ。
そうとう
練習したんだろうな。
どれだけの思いで
ここまで駆け抜けて
きたんだろうか……。

私は思いきって
修二君の傍へ近寄ると
学生バッグの中から
結局洗わないままで
しまっといた
フライドチキンの骨を
取り出し
彼の肩あたりで
左右に振ったり
叩いてみたりと
とりあえず穏健に
とり憑いている
ゴキブリに対して
果敢にお祓いを
敢行してみた。

「……お前、
何してるの?」

端から見たら
ただの阿呆だろう。
そんな邪険にされながらも
私は真剣に挑む。

……やってみなけりゃ
わからない。
やる前から諦めてたら
何も変わらない。

すると変化が起きた。

それまで腕につかまり
まったく動かなかった
怨霊だったのだが、
長い触覚を小さく
こちらに向けたかと思うと
急に地面まで
瞬時にして這い回った。
私はあまりの素早さに
驚き骨を投げて
しまったのだが、
ゴキブリはその体を
震わせて
耳障りな羽音を出し
放った骨より早く空を飛び
私のかかえていたカバンを
かっさらっていった。

衝撃でへたり込む私。
何が起きたか
わからない私達。
カバンの中から
残りの骨を漁る呪いの虫。

……ひ、ひぃぃぃ。