オバケの駐在所

……ん?
私の真似をしてるんじゃ
ないのかな。

若干の好奇心に駆られ
その鼻の尖った緑の子に
顔を近づけて
つい話しかけてみる私。

「何を運んでるの?」

瞳の大きな緑の子達は
その体をめいいっぱい
動かして夢中に
階段を下ってゆく。
そして視線を一度
こちらへ向けると
去り際に声高なトーンで
口々に喋りだした。

「玉恵、
……死んだから運べ。」

「体育館裏へ運び出せ。」

オバケの言うことは
心をかき乱す事ばっかり。

……死んだって?
誰が?

私が下駄箱についた頃には
生徒達は帰宅しているか
部活動に出ているのか、
だいぶ静かで
みんな出はらっていた。
向こうの階段のほうから
抜かしてきた
男子生徒の声が
聞こえるくらいだ。

コインローファーの
かかとを指でおさえながら
上履きを下足入れにしまい
蓋を閉める。
下足入れには
誰のだかわかるように
ネームがつけられているが
志野ちゃんのを探して
見てみると名字だけで
下の名前は書いていない。

私はため息とともに
軽い気持ちで志野ちゃんの
下足入れを開けてみると
きちんと乱すことなく
揃えて置かれた
ローファーがそこにあった。