オバケの駐在所

私はその夜、
制服を着たままだったが
おまわりさんのいる
交番を訪れた。

遠くから
カエルの合唱が
聞こえてくるくらいの
落ち着く静かな夜。

「どう思うハジメさん。
あの目は
もしかしたらだけど
恋している
眼差しじゃないかな?」

おまわりさんは
蛍光灯の光と
小さなスタンドライトを
使って一生懸命
書き物をしていた。

「余計な詮索を……。
人の恋事情に
首つっこむもんじゃ
ないよ。」

「別にいーじゃん。」

入り口の戸は
全開にしてあって
具合のいい
暖かくなった夜風が
そよそよと
入り込んでくる。

その風が気持ちよくって
私は戸の近くで
壁にもたれかかりながら
柿ピーをつまんでいた。

……しかし呪いなんて
バカな事を。
そんなに憎かったのかな
あの2人が。

チェシャ猫の笑いのような
赤い三日月が向こうの空に
浮かんでいるのを見て
ぼんやりと考える私。

恨みつらみを
持たれるほど
波乱に富んだ生き方を
してるワケでも
ないだろうし……。