オバケの駐在所

「志野ちゃん、
彼らは本当は
すごいんだよね?」

淡々とピッチングを
繰り返す2人を見て
不憫に感じるのだ。

本来の力を出し切れず
人に小馬鹿にされ
それでいて見えない敵に
体を蝕まれている。
原因もわからないのに
なお努力する姿は
健気ではないか。

「うん、とびきりね。」

自信満々に答える彼女。

……とびきりか、
そりゃ是が非に
見てみたい。

「よーし、志野ちゃん!
今回の一件私に……」

なんて私が意気込み
大手を振って
彼女の肩を掴んだら
聞き慣れた声が
横やりを入れてくる。

「おーい!」

見ると学校の中に
似つかわしくない
私服姿の男性が
こちらに歩み寄ってきた。

黒いパーカーに
深みのあるジーンズ。
帽子はレザーが
入ったハンチング。

「あれ?
ハジメさん……。

どうしたの?事件?」

近づいてから
初めてその人が
近所に住む変わり者の
おまわりさんだと
気づいた。

異端者の
駆け込み寺の主人。
警察の制服しか
見たことなかったが
私服の格好を見ると
意外に人間らしい。
……いや、若々しい。