そうだ。
落ち着かないと。
冷静にならないと分かるものも分からない。
私は右手の本棚と左手のTシャツを離して、大きく深呼吸をした。
少し落ち着きを取り戻した私は、彼の話を受け入れる準備を整えた。
「大丈夫。ちゃんと聞く」
彼の金の瞳を見据えて。
「うん……。僕の生まれた星は地球では“ハルカ”って呼ばれているんだ」
「ハルカ?」
「距離が遠い“遙か”っていう意味」
「日本語なの?」
「そう。地球に僕らの仲間が着いたのは何百年も前なんだけど、最初に着いたのが日本だったんだ」
そんなに昔から地球に居るの?
何だか色々ついていけない話が序盤から出てきて、早くも挫折しそう。
「ハルカはまだ地球では観測されていないんだ。今の技術ではハルカを観測出来る程遠くまで見える望遠鏡がないから」
そんなに遠いの?
観測出来ない程遠く?
そんな遠くの星に生命が生きている。
“人間”という奇跡は遙か遠くの星でも起こったということ。
知らなかった事実ばかりだ。

