「これ……!」 「70円になります」 「ええっ!」 「嘘だよ、俺のおごりっ」 あははっと笑う岡田くんにあたしは「ありがとう」と言うのが精一杯だった。 人懐っこくて笑顔が眩しい人――それが岡田遥斗の第一印象。 「あ、あたしのメロンパンも半分あげる」 「まじ? なんか得した気分!」 半分このパンは、なぜかいつもよりおいしく感じた。それは雲一つない空の下だったからか、気持ちのいい風が鼻をくすぐったからか……。それとも――。 なんて、そのことにあたしが気付くのはもっと先のお話。