「あと五分か……余裕じゃん!」


理玖は、校舎にかかった時計を見ると笑顔を見せた。自転車を全速力でこいだため、少し息が上がっている。

一人で乗るならまだしも二人も乗っていたら使う体力は二倍だ。それなのに嫌な顔一つせずにあたしを乗せてくれた。
お人好しで世話好き、全然変わってない。


「……ありがと」
「いいえ。その代わり今日の放課後付き合って?」
「え?」
「よし、教室まで競争な!」
「え、ちょっ、待ってよーっ」


梅雨の時期には珍しい、雲一つない空の下、あたし達は一歩踏み出した。
たった一歩、だけど大きな第一歩。水溜まりを飛び越すような第一歩。