“だって今日は修の誕生日でしょ?”
高木功は少し間を置いた後に『確かにね』と意味深に笑った
ナノハは諦めきれないのかまだ帰ろうとはしない
そんな姿に高木功は複雑な気持ちを抱いていた
『そんなに大切に想われて羨ましいな…』
聞こえないように言ったつもりがナノハにはしっかりと聞こえていた
『大切だよ?功の事も』
ナノハは花を見ながら言った
高木功はスッっとメガネ取り制服の袖でレンズを拭く
『弟だからでしょ?』
ナノハが言う大切が修の事を想う大切と違う事は高木功が一番良く分かっていた
『うん。功は修の弟だから大切だよ?』
ナノハに悪気はない
でもその言葉が高木功にはチクリとした
高木功はメガネを掛け直してナノハに近付く。そして肩を叩き言った
『もう暗くなって来た。そろそろ帰ろう?兄さんが待ってるよ』
高木功はひそかに叶わない片思いをしていた
それは兄である修もナノハも知らない
高木功本人ですらこんな気持ちになるなんて思ってもみなかった
でも高木功にとって一番大切な人はナノハではない
ずっと憧れ続け、自分もこんな人になりたいと願い
今では近いような遠いような存在になってしまった修
修の存在は高木功にとっても大きかった