Iの漂流戦士





『ご注文お決まりでしょうか?』


タイミングが良いのか悪いのか、後から来店した正義に店員が声を掛けてきた


『え、あ……今はまだ………』


今はそれどころではないという雰囲気を出したが、『俺コーヒーおかわり』と倉木が冷静に注文をした


正義もそれに合わせるかのように『じゃ…俺もコーヒーを』と続ける


店員が居なくなった空間では、また微妙な空間が流れていた


『く、倉木さん…本当に何があったんですか?俺なんでも話し聞きますから…』


様子のおかしい倉木に思わず身を乗り出す正義



『コーヒー2つお待たせしました』

明るい声でテーブルにコーヒーを置く店員は接客態度は満点だが、今の二人にとっては満点とは言えない


倉木は湯気の立った入れたてのコーヒーを口に持っていった



『お前さっき俺が言った言葉の意味が分かるか?』


“俺はな人殺しなんて世界中にうじゃうじゃ居ると思うんだよ”



『いえ……』


正義は口ごもり、まだコーヒーには手を付けていない


『だってさ年間の自殺者数知ってっか?そいつらを死に追い込んだ連中がその数だけ居るって事なんだよ』


本当に“らしくない”
倉木はこんな事を言う人じゃない

それは付き合いの長い正義が一番分かってる事だった


倉木は正義の反応を無視して話し続けた

まるで自分自身に問いかけるように



『そいつらは監獄に入る事も罪になる事もない。
俺はさ星野…そいつらは立派な人殺しだと思うんだよね』


『…………』


『法や警察が裁かないなら一体誰がそいつらを裁くんだと思う?』


正義はゴクンと息を飲んだ

倉木の話しを聞く内に浮かび上がってくる名前



『俺はな…そんな重荷を背負わせてしまったんだと思うと今も夜が眠れねーのよ。』