『な…なんかあったんですか……?』
正義と倉木が座っているテーブルは完全な死角になっており、店員が注文を聞きに来ない限りあまり人目につかない
倉木はカチャンッとコーヒーカップを机に置き、体をソファーに預けた
どんな時も手離せないタバコは机の端に置かれて吸われていない
その間、正義は倉木が口を開くのをただジッと待っていた
----そして、ようやく倉木が口を開く
『お前人を殺した事はあるか?』
正義の口は半開きのまま、目をぱちくりさせた
『え………?』
聞き直すのが精一杯だった
どこかいつもとは違う空気は感じていた
でもまさかこんな事を言われるなんて……
倉木の言葉は正義の予想を遥かに…本当に遥かに越えていた
倉木は目線を下に下ろし、空になったコーヒーカップを見つめた
『星野……俺はな、人殺しなんて世界中にうじゃうじゃ居ると思うんだよ』
正義は真正面に座る倉木の顔を反らさなかった
(違う、この人は俺の知っている倉木さんではない。
誰だ?この人は…誰?)
正義はあまりに受け入れがたい状況に、頭がパニックになっていた



