わずか3秒の沈黙が正義にはどれだけ長く感じただろうか

正義は自分の耳だけに聞こえる鼻歌を辿って(たどって)いただけだった


別に意味も目的もない

だけど気になったから追った

ただそれだけ


ドクン…ドクン…ドクン……

正義の心臓がものすごい速さで動く


仮面を被っているからと言って殺人鬼とは限らない

服装は制服だし、相手は多分未成年だ


もしかしたらふざけて被っているだけかもしれない

正義はそんな逃げ道を必死で探していた


でも、仮面に付いてる血痕は間違いなく本物


月明かりがちょうどビルの隙間に差し込む


その時正義に見えたのは金色の髪に、仮面から見えた青い瞳

紺色のセーラー服に赤いスカーフ


そして……

殺人鬼の証である首のナンバー


“02”

ドクンッ………………


正義は今すぐにでも掴んでいる手を離したかった



情けない話だ

今まで殺人鬼の事を散々調べてきて、情報の少なさに苛立ちさえ感じていたというのに


その殺人鬼を目の前にしたら理性や思考が全てどこかへ飛んでいってしまった


震える正義の手は、まだかろうじて少女の腕を掴んでいた


それは殺人鬼を野放しにしてはいけないという責任感ではない


まして警察に連れて行こうだなんて気持ちはなく、


正義の思考を繋ぎとめていたのは“教師”という立場

少女は殺人鬼であり、セーラー服を着た未成年

教師として補導する気もボランティア団体として保護する気もない


ただ…救ってあげたかった


人を殺すまでに憎んでしまったその心を