Iの漂流戦士








はじめから知ってる。蝶達は菜の花より桜が好きだって事

それでもただ一人の人に好きだと思ってもらえれば良かった



“嫌いだったんだと思う”


どうして大好きだった人に言われると、こんなにも自分を否定したくなるのだろう

どうして独りぼっちのような、誰にも必要とされてないような気持ちになるの?



ナノハは気付くと学校の屋上にいた

辺りは夕暮れ時で、オレンジ色の明かりがナノハの顔を照らす

銀色の手すりを乗り越えると、やわらかい風が制服のスカートを揺らした


高い所から見る景色はキラキラしていて、嫌いな学校も別物に見える



『………………綺麗』


ナノハはそう呟くと、一筋の涙を流した


涙の理由はこんな時でさえ綺麗だと思う感情ではなく

こんな綺麗なもの置いてく寂しさじゃなく

綺麗な事だけじゃ生きられないこの世界に泣いた



大好きなもの、大切なもの、未来

そんなキラキラしたものなんていらない

今欲しいのは明けない夜だから




--------------ガタンッ---。



一歩、一歩と足を進め、ナノハは両手を広げた


“もう、あんたはすぐ謝るんだから。まぁそこが可愛い所だけどね”


もう二度と訪れないあの瞬間。あんなに待ち遠しかった明日が今は憎い


ナノハは大きく息を吸い込み、そのまま前に倒れた


それは静かに、音もなく-----------。






ナノハが誰にも気付かれず終止符をうったその先で、裏庭の花壇もまた黄昏色に染まっていた