少女は少年の顔をじっと見つめた
『やっぱり似てるね。メガネを外したらそっくり』
『はは、当たり前だよ』
少年はかけていたメガネを外して制服の袖でレンズを拭く
それと同時に、袖に付いている学校指定のボタンがキラリと光った
そのボタンには“睦”と彫られた紋章が
----と、その時
少女のスカートがヒラリとめくれた
少女は手すりに足をかけ、手すりの向こう側へと移動する
ほんの数センチしかないコンクリートの隙間に足を置き、靴の爪先は外にはみ出ていた
少年は何の動揺もなくメガネのかけ直すと腕にしている時計に目を向けた
『もう時間だね』
そう言うと、少女は両手を広げ鼻歌を歌った
その歌は誰もが聞いた事のある童謡“ちょうちょう”
暫く歌った後で少女は顔だけクルリと振り向き少年に言った
『補導員に捕まらないように気を付けて帰ってね。功』
少年改め、高木功はクスリと笑った
『ご心配なく』
その声はもう少女には届かない
さっきまで居た場所に少女はもう居なかった
高木功は少女が飛び降りた場所を見ながら歌った
それは先ほど少女が歌っていたあの曲
“ちょうちょう、ちょうちょう
菜の花にとまれ
菜の花があいたら
桜にとまれ”
『残酷な歌だね。ナノハちゃん』



