一馬にその後の記憶はほとんどない。気が付くと自分はまだ屋上に居て膝を抱えていた
一つだけ分かるのは時間だけが進んでいるという事
空はいつの間にか暗くなっていて、黄色い満月が辺りを照らしていた
それをジッと見つめながら、自分は死んだのだと実感する
『こんな場所に居たって何にも変わらねーよ?』
声がする方向に目を向けると満月に照らされた1人の少年
何者かは分からないが、きっと彼もこの世に存在しない人物
『……誰ですか?僕をあの世に連れて行くんですか?』
本か何かで読んだ事がある。死んだらあの世の遣いが迎えにくるって
『は?なんで俺が連れて行くんだよ。そこに居るのは自分の意志だろ?』
『………僕の意志?』
そんな訳がない。ここから居なくなりたくて飛び降りたのに
『未練があると死んだ場所から動けなくなるらしいよ?俺はそんなのないから知らないけど』
少年はひょいっと手すりに乗り、その上を簡単に歩いている
やっぱりこの人も死んでいるんだ