『え…く、倉木さん?』
正義は予想外の反応に歩く足を止めた
暗闇の夜の下で今も倉木は笑い続けている
『……あーごめん、ごめん!確かにそう思うよな。俺も最初は疑ってたぜ?まぁ、本人に聞く勇気はなかったけど』
正義はその言葉に驚いた
それは倉木が自分と同じ疑いを持っていたからではな
い
正義は心のどこかで、倉木も高木功の事を殺人鬼と疑っているんだろうなと決めつけていた
それなのに倉木は“最初は疑っていた”と発言した
つまり今は疑っていない事が分かる
それならば今までの発言や行動はなんだったんだろう?
高木功は殺人鬼ではないけれど、殺人鬼と繋がりのある人間なのだろうか
『あ…あの…倉木さんは殺人鬼についてどこまで知ってるんですか……?』
おもいきって聞いてみた
少しだけ重たい空気が流れた後で倉木は静かにこう答えた
『知っててもどうする事も出来ないよ俺には』
倉木の横顔はさっきまで笑っていた姿はどこにもなく、真剣な教師の顔になっていた
それは一体どうゆう意味なのか…
正義は倉木に聞こうとしたが、ゴクンッと唾を飲み込んだ瞬間に言葉も飲み込んでしまった
でも、例え聞いても倉木はこれ以上何も言わないだろう
真実はまだ沢山の謎に包まれている
そして正義の中に浮かんだ一つの事
(もしかしたら倉木さんは殺人鬼の正体を知っているのかもしれない)
そんな根拠もない疑惑だけが正義に残った



