“………兄さんはまた俺を置いて行くんでしょ?……またこの世界に俺を独りにするんでしょ?”
“そんな事したら、今度こそ俺は兄さんを二度と許さないよ”
弟である高木功に言われたあの言葉が蘇る
『お前は勘違いしているよ一馬。俺は別に自分以外の人間を優先してきた訳じゃない』
月明かりに浮かぶ修の顔は何を考えてるか分からなくて、一馬は一瞬戸惑った
『……俺はそうする事で、本当の素顔を隠していたのかもしれない』
一馬は修の目を反らせなかった
だって、今まで見てきた修が素顔ではなかったと言われた気がして
修は時々、自分でもどれが本当の顔なのか分からない時がある
苦しくても何とかなると思えてた時
居場所を求めて、殿町にたどり着いた安心感
弟という繋がりを見つけたのに、何も言おうとしなかった自分
狂気に満ちて全てを終わらせようとしたあの瞬間
誰にも頼らないと決めたのに、最後に助けを求めたあの電話
どれが本当の自分で、どれが正しい感情だったんだろう
考えても考えても、迷いは消えない



