『……………』
修は高木功の言葉に無言だった
むしろ、いつも周囲の様子に敏感な修は高木功のいつもとは違う雰囲気に気付いていた
“兄と弟”
そんな近い関係でありながら、肩を並べて歩く事はない
近いようで遠い修の存在は、高木功にとってある意味苦しいものだった
『………兄さんは一度でも俺に本音を言った事がある?』
高木功は背を向け続けている修にこんな言葉を投げ掛けた
今まで過ごしてきた修との日々
そして数えきれない程交わしてきた会話の数々
その中で修の本当の素顔は、もしかしたらどこにもなかったのかもしれない
『……いつだって兄さんは本音を言わない。何を聞いても平気な顔をして、俺はいつもかやの外』
高木功の声は震えていた
一年前、修は何一つ相談してくれなかった
何も言わずその手を赤く染めて、屋上から飛び降りた
“東和市岼根町
息子が父親を刺し殺す”
そのニュースを見た時の感情は今でも忘れられない
『……俺はあの時、事件の事や兄さんの死をテレビで知ったんだよ。それがどれほど寂しかったか分かる?』



