【公立 富江女子高等学校】
ナノハは一時間、学校の周りをウロウロと歩いていた
“杉本先輩の呪い”
そんな噂があるのはナノハも知っているし、仕方ないとさえ思っている
だって死んだはずの人間が、こんな風に学校の周りをウロウロしてたら
誰だって成仏出来ずにさ迷ってると思うだろう
『はぁ…どうしようかな…』
ナノハはついに門の手前で座り込んでしまった
目線は敷地内の遥か先
そこへ行きたいのに、どうしてもこれ以上前に進む事が出来ない
“あの場所にもう一度行ってくる。今度は逃げずにちゃんと向き合ってくるから”
そう修に誓ったはずなのに
『…あ、あれ………?』
気が付くとナノハの目からポタポタと涙が流れていた
何度手で拭っても次々と涙は溢れ出す
『……変だな…なんで私泣いてるんだろう』
ナノハは唇を噛み締めて、胸に手を当てた
本当はずっとずっと苦しかった
血がかよっていないはずなのに身体は何故か熱くて、心がない殺人鬼だったはずのに涙が出る
あの出来事は夢だったんじゃないかって何度も思った
でもこの場所に来て、胸を抉(えぐ)るような悲しみは紛れもなく本物
“あたし桜って言うの。宜しくね。ナノハちゃん”
『……ハァ………ッ』
幻聴のように聴こえる悪魔の囁き
“ごめん。好きと思った事は一度もない。
だからきっと嫌いだったんだと思う”
ナノハは体を震わせながら、その場所から走り去った
----ちょうちょう、ちょうちょう
菜の花にとまれ
----菜の花があいたら
桜にとまれ



