Iの漂流戦士






この場所は一馬にとって一番訪れたくない場所で
きっと逃げ出したい程、苦い思い出が詰まっている



『……本当は辛いんじゃないの?』


一馬は正義に背を向けたまま、何も言わない。その背中は少し震えていた


--------------当たり前だ。


一馬は死んでからこの場所に近付く事さえしなかったし、中に入ったのも“あれ以来”


それでも一馬を突き動かしているのは、大切に想う修やナノハの存在だった


一馬はクルリと振り向き、正義の顔を見つめる



『……確かに辛いし怖いです。でも逃げるから過去は追ってくるんです』


その顔は悲しみの中に強いものを感じた


変わる為に過去と向き合う

みんなの先導に立ち、勇気を与える為に



『………もしかして、倉木さんの背中を押したのも君?』


迷いの渦に居た倉木を正しい道に導き、

そして修との過去を打ち明ける決意をさせた



『僕は何もしてません。ただ修さんへの恩返しですよ』


『恩返し……?』


一馬は修と初めて会った時の事を思いだし、微笑んだ


『僕の事を理解して手を差し伸べてくれた。だから今度は僕が修さんを救う手助けをしたいんです』


一馬は再び歩き始めた

その足は急ぎ足ではなく、ゆっくりと




『行きましょう。僕が自ら命を経った場所へ』