Iの漂流戦士







“何かあったら俺に言え。何もなくても俺に言え”


何故かふっと倉木の言葉が頭を過った

隣を見ると緑色の公衆電話


修は濡れた体で中に入り、ポケットから数枚の小銭を取り出した


-----プルルルル…………


電話をかけた先は緑丘高校


----プルルルル……ガチャ


『はい。私立緑丘高校です』


電話は職員室に繋がった

修は10円を再び投入して、声を出した




『…………1年2組の枝波修です。倉木先生に代わって下さい』



公衆電話の透明のボックスに強い雨が打ち付ける



『…倉木先生ですか?少し待って下さい』


この状況に不釣り合いな鳥のさえずりの保留音


修はまた10円を入れた

残りのお金はもうない


タイムリミットが近付く中、電話の向こう側で声がした



『………もしもし?』

それは紛れもない倉木の声


『…………先生…』


修は声を振り絞った



“なぁ、お前には心配してくれる人が居るか?”


-------分からない。

分からないけど、電話をかけようと思った


最後に、電話をかけようと思った



『修……?何かあったのか?』



----あったよ。何から話そう

はじめから話すには時間が足りない


だから、




『先生、俺もう行くね』


----どこに?

そんなの決まってる



『え…修?おい、修……』

耳元でプープーと保留音が鳴っている

タイムリミットはゼロ


もうこの電話は誰とも繋がっていない