-------いつから歯車が狂ってしまったんだろう。


それはきっと9年前からだ


修の母親は修が8歳の時に死んだ

原因は過労によるクモ膜下出血


その頃から定職に就いていなかった父親の代わりに、母親は朝から晩まで働いていた


修の将来の為にと、わずかなお金で貯金までしてくれた


母親が倒れた日、父親は病院にすら顔を出さなかった

理由は酔いつぶれて家で寝ていたから



修はいつも母親に聞いた



“どうしてあんな奴と一緒に居るの?”


すると必ず同じ答えが返ってくる



“あんな人でも昔は優しくて、お母さんが初めて好きになった人なの”


-----だからなに?

今は優しくもないし、周りの人間を傷つける事しかしていない


でも修は気付いた


きっと母親はこんな父親を愛しているのだろうと

子供の為とかじゃなく


自分の為に一緒に居るのだろうと



そして修の母は眠るように病院で息を引き取った



死ぬまで愛し続けた人に

死ぬまで愛されなかった



だから修は母親を忘れない


あの父親の中に母の幻影が存在しないのなら

自分の中に幻影を作る


そしたらきっと、その心の中でこれからも生きていける思ったから