修はそんな気持ちを圧し殺してベンチから立ち上がった
『初めまして。功くんの友達で修と言います』
こんな時でさえ嘘によって救われる
そしてその嘘を付きながら笑えている自分自身が怖かった
『そうなの。功がお友達と一緒に居る所なんて初めて見たからお母さん嬉しいわ』
本当に優しそうな人で、この人を平気で傷つけた父親はやっぱりクズだ
『せっかくだから晩御飯うちで食べて行ったら?いつも2人で寂しいのよ。ね?功?』
お母さんは少しウキウキしている様子だった
『僕は…えっと……』
修に気遣っているのか、高木功は返答に困っている
修はそんな2人を見てニコリと笑った
『いえ、今日は帰ります。家で母が待っているので』
母と言った瞬間、修は少し泣きそうになった
それは母親を嘘の道具にしてしまったからじゃない
この嘘が本当だったらと強く願ってしまったからだ
高木功はきっと母親を大切にしている
その証拠に母親の前では自分の事を“僕”と言っていた
多分無意識に良い自分を演じているのだろう
それは決して悪い事じゃない
修だって母親が生きていたら勉強も頑張るし、自慢の息子でいたいと思ったはず
でもその想いは永遠に叶わない



