Iの漂流戦士





どこか吹っ切れたような横顔を見て、正義は確信した

倉木は今日話そうとしている

今まで決して見せようとはしなかった深い部分



『…ば…場所変えますか?今日は人も多いし、それに…』


急に襲ってきた緊張感

正義の心臓はものすごい速さで動いている


そんな正義とは逆に、倉木の表情は晴れやかだった



『だからこの場所にお前を呼び出したんだよ』


『………え?』


雑音の中で聞こえた倉木の言葉に、思わず聞き返してしまった



『人も居なくて静かな場所で話したら、気持ちまでもっと重くなって最後まで話せる自信がねーからよ』


倉木はそう言ってポリポリと顔を掻いた



『………倉木さん』


正義はそう呟くのが精一杯だった



人は沢山居るのに、それがスローモーションのように見える


倉木をここまで突き動かしたのは一体なんなのだろうか?

それが一馬だとは夢にも思わない



そんな倉木の第一声はとても意外なものだった



『……星野、ありがとな』

考えてみれば、倉木にお礼を言われたのは初めてかもしれない



『……ど、どうしたんですか急に』


倉木の“らしくない”言葉に動揺を隠しきれない




『ずっと気になってただろ?俺と修の事』


『…………』




『でもお前は深く聞かなかったし、聞こうとしなかった。もし無理矢理にでも問いただされていたら…俺は一生話そうとしなかったかもな』