Iの漂流戦士







『……分からない。兄さん達が大切なら、苦しくても一緒に居る事を選ぶべきだ』


高木功に一馬の気持ちは伝わらない

平然とそんな事言う姿に、再びあの音が辺りに響いた



ーーーーバコッ!!


『苦しくても?軽々しくそんな事言わないで下さい』


一馬の右手が高木功の頬に当たった

生まれて初めて人を殴った一馬の手はジンジンと赤くなっていく


血が出るほどの勢いはないが、高木功の頬は微かに腫れていた



『あの苦しみから解放されない事がどんなに辛いか、功さんには絶対理解出来ません』



絶対理解出来ない

それを聞いた高木功は何も言わず黙ってしまった


確かに高木功の過去には、苦しみも悲しみもなく

自ら命を絶つ程の傷みもない


高木功をここまで突き動かしたのは修で

修の存在が全てだった



修が世界を憎むなら、

一緒に憎む


修が殺人鬼として生きるなら

自分も共に生きる


高木功にとって、兄である修は


神様より尊(とうと)いものだった

……だったはずなのに




『……功さん。僕は大切だからこそ、ずっと救われずにいる修さん達を見てられない』



『…………』



『……それでも分からないのなら、功さんにとって“一番”は修さんではないのでしょう』