【殿町 駅前ターミナル】
今朝の慌ただしい時間が嘘だったかのように、殿町は夜を迎えた
それぞれの揺れる心情とは裏腹(うらはら)に
若者が集まる街は普段となんにも変わりない
そんな中で、この二人もまた殿町に居た
『じゃぁ、星野さんと倉木さんは商店街の方をよろしくお願いしますね』
ボランティア団体、愛の手
そのメンバー達は二人一組になり、パトロールする決まりだ
正義と倉木はどこか気持ちの切り替えが出来ず、パトロールに身が入っていない
『…………倉木さん』
正義が何か言いかけると、倉木はタバコに火をつけた
暗闇に炎が灯(とも)ると、フーッと口から煙をはく
『俺、右の方から回るからお前は向こうから回ってくれ』
商店街の入り口に着くなり、倉木は足早に正義から離れた
『あ、倉木さん……!』
そう呼び止めようとしたが、倉木の足が止まる事はなかった
正義の目から見ても、倉木はあの修の言葉を気にしている
“それでも俺は父親を殺した”
その真意とは一体なんなのか、
倉木に聞きたい気持ちはあるけど、聞ける雰囲気ではなかった



